20年間余り勤務していた大企業を2年前に退職した金(55)氏は、ソウルの江南(カンナム)地域に時価10億ウォンを超えるマンションを購入し、所有している。サラリーマンを始めた新人の頃は借家での生活でスタートしたが、それ以来受け取った給料やストックオプション、退職金などをこつこつとためて、自宅を買い、資金を増やすのに投資した結果だ。
しかし、このマンションを除くと、金氏が保有している金融資産は2000万ウォン弱。別途の固定収入はなく、持っている預金をそのまま生活費に当ててきた金氏は、大学生の2人の子どもの結婚を控えて悩みが多い。
米国社会ではかつてから、「land(house)rich, cash poor」とよく言われる。住宅や土地などの不動産資産は多いが、処分が容易ではなく、直ちに使える資産が多くないために生活に困難を覚える人々を指す言葉だ。最近、韓国社会でもこのような「貧しい金持ち」が急増している。
●すっからかんの不動産金持ち
江南で家を借りて住んでいた李(36・女)氏は今年初頭、自分の実家と近いところに時価5億ウォン相当のマンションを購入した。本人と夫が持っていた金融資産をはたいたうえ、購入したマンションを担保に入れて銀行から2億ウォンの融資を受けた。
周辺からは、「ついにマイホームの購入に成功した」と言われているが、李氏は楽な気分ではない。旦那の1ヶ月の収入は250万ウォン足らずなのに、毎月、融資の元金や利息だけで200万ウォン近く払わなければならないからだ。
「現金なき金持ち」たちは、韓国家計の新たなトレンドでもある。
現代(ヒョンデ)経済研究院によれば、昨年5月現在、韓国全体世帯の1世帯あたりの平均総資産2億8112万ウォンのうち、76.9%が不動産だった。同研究員の李ジュりゃン博士は、「米国などの多くの先進国では同比率が半分以下で、これと比べれば非常に高い数字だ」と語った。
●住宅価格は上がったが所得は増えない
貧乏な金持ちが増える最も大きな理由は、ここ数年、住宅価格や土地価格や急騰したものの、長期間の景気低迷で、実際の所得はそれほど増えていないだめだ。
国民の実質的な購買力を表す国民総所得(GNI)は、2003年から昨年にかけて、年平均2.2%の増加に止まった。さらに、現政府に入ってから、総合不動産税などの保有税の負担が増えたことも重要な要因だ。
「貧乏な金持ち」たちの生活水準は高い物価のため、さらに下がっている。
江北(カンブク)地域から先日、江南(カンナム)のほうに移り住んだ李(37)氏は、息子の保育施設への支払いが江北より、1月に50万ウォンも多くかかって気をもんでいる。
李氏は、「子どもの教育のために急いで引っ越してきた隣人たちの中には、自宅にまともな家具や家電製品すら置けないケースも多い」と話した。
[2007年6月29日]